2013/08/30

[Review] マン・オブ・スティール

スーパーマンと言うと、あわや飛行機事故が発生しそうな時に颯爽と現れ、自らの怪力と機転でその危機を救い、「航空機の事故は統計学上少なく、安全な乗り物です」と言って去っていく、というのが印象的ですよね。居合わせたロイス・レインがそこで失神する、というのもお約束な展開ですがw
本作は、そんなコミカルな要素は全くと言っていいほど無く、また『スーパーマン・リターンズ』の続き、というわけでもありません。スーパーマンことカル=エルの出身星であるクリプトンが、まさに崩壊せんとする只中で生を受け、地球に転送されクラーク・ケントとして生きるも、有り余る能力とそれを訝る周囲、出生の秘密、そしてその生と能力をどう使い、どう選ぶか、と言うところに焦点を当てた、謂わばヒーロー誕生の紆余曲折を描いた作品と言えます。
そしてそこが、原案・制作に携わったクリストファー・ノーランの手腕の一つ、とも言えるのでしょうか。『ダークナイト』シリーズと同様に、単にヒーローの能力を余すことなく行使する、謂わば王道のエンターテインメント作品の枠に捉えない、一人の『人間』としての苦悩が端々に窺えます。

ただ、やはりこの物語を人間の心理の奥深くまで巧みに表現しようとなると、ちょっと端折りすぎかなぁ、とも思いました。主人公としてはちょっと潔癖なのかな? という感想を持ちました。
自分の出生、人とは違う能力、歳を経るごとに『地球人ではないのでは』と思えるような行動の数々が、逆に自分自身に疑いをかけてしまう。父親はクラークに対して愛情を注ぐも、(確執とまではいかないが)どこかすれ違いが続いてしまう。有り余る能力を持つ者の悩みは基本的にはその本人にしか理解できるものではなく、多くの場合で利己的にその能力を駆使するも、その歪みが生じる諸問題を目の前にしてやがて自分の能力の使い道を選ぶ… そう言う意味で、シンプルながらも力強いメッセージを与えてくれたのが、トビー・マグワイヤ主演の『スパイダーマン』最初の作品であったように思います。
本来であれば、自分の能力が分かった時点で、同時に自分の使命を知らされていようがいまいが関わりなく、『自分のために』能力を使うというのが『人間らしい』と考えてしまいましたが、今作の場合はあっさりと『能力の使い道』の方向性が定まってしまうあたり、やはりどこか潔癖な感じがしなくもないのです。考えすぎでしょうか… ^^;
いや、そんな風に自分の使い道を初期の時点でしっかり見据えることが出来たのは、自身の中に刻まれたトラウマがあったからこそでしょうね。有り余る能力を如何なく発揮出来たのに、それでも目の前で自分の父親を失くさざるを得ない。これから先、そんな思いは、自分も含め、誰にもさせたくない。この気持ちは、純粋に『人の為』というものではなく、『人の為』をきちんと『自分の為』に置き換えたからこその感情なのでしょう。
あー、書けば書くほど、やっぱり主人公の潔癖さが大きく表現されてしまう様な気がします。もしかしたら、ビギニングたる本作に全てを詰め込むのではなく、『スーパーマン』として覚醒した『後』ならではの葛藤等もあるのでは、と勝手に妄想が膨らみ、そこにより一層人間臭い部分があるのかな、と思ったりします。 ^^;

それとは裏腹に、物語の進行は至ってシンプル。地球を第二のクリプトンにするためにやってきたゾッド一味。そうするための鍵となるコデックスを狙うための攻防。人外としての戦いの一部始終及びその表現も、出来る限りリアルに、実際にその場で起こり得る戦いであるかのように表現されている、と感じました。

予想外の展開や奇をてらった演出などはほぼ皆無に等しく、スーパーマンとしての『王道』たる表現を、しかもキャラクターの内面の葛藤も交えながら表現されている本作。これを起点に、その後どのような展開が待ち受けているのか、より一層、クラークを始めとする様々な人間模様が描かれるのかが楽しみです。



映画『マン・オブ・スティール』公式サイト

2013/08/21

[Travel Writing] 真夏の紀伊路 - 後編

紀伊路の最後を締めくくるのは、和歌山市加太港の沖にある友ヶ島です。
基本的に無人の島ではありますが、釣りやダイビング、島内散策のために宿泊施設は用意されている模様。それでも、年中無休というわけでも無いようですので、島に来るには、ある程度の情報収集が必要になります。そんな島ではありますが、1日に4~5往復の船便があったりするので、個人的にはアクセスしやすい島なんだなぁ、という印象を受けました。

この島を何故選んだかと言うと、やはりこの記事が僕にとって大きな影響を及ぼしたからでしょう! 流石にラピュタそのもの、というには語弊があるかもしれませんが、鬱蒼と生い茂る森の中で、ひっそりと眠る廃墟群を見ると、興奮は勿論ですが、同時に、当時の生活、悲喜交々などのそこに生きた人々の思いを馳せずにはいられないのです。どんな気持ちでそれを建て、どんな気持ちでそこに暮らし、どんな気持ちでそこを捨て去ったのか……

友ヶ島は、加太港から船で20分くらいの場所にあります。早速、一番の船に乗り込んで行きました。しかし、待ち受けていたのは脳を目一杯刺激せん、というくらいの自然と遺跡群とは別に、炎天下の中の過酷な道程でございました… そう、最終日であるこの日も、なのです。 (´∀`;)



友ヶ島に今も残る遺跡は、明治時代、旧日本軍により、外国艦隊の大阪湾への進入を防ぐ目的で、沖ノ島内5箇所と虎島に砲台や防備衛所が造られました。以降、第二次世界大戦までは要塞施設として一般人の立入は禁止されたそうです。
しかし、第二次世界大戦は航空戦主体となり、対艦用に造られた砲台は使用されることのないまま終戦を迎えます。これらの施設は戦争が終了した時点で無用の長物となり、打ち捨てられ、現在に至ります。爆撃などの攻撃にさらされることなく、当時の姿をほぼそのまま残している、貴重な土木・建築の遺産として、2003年には土木学会選奨土木遺産に選出されました。
今は、木々の枝と根が、そこに住まう鳥や虫、小動物が、静かにその遺跡群を守り続けています。

煉瓦造りの建物(一部には木造のものも)以外は殆どなにもなく、遺跡内は一部を除いて特に立ち入りが制限されているわけではありませんから、中の様子も窺い知ることが出来ます。はっきり言って、下手なお化け屋敷よりも数段怖い! じりじりと照りつける外の気候も、一旦中に入ればひんやりとした空気に包まれます。



遺跡以外にも友ヶ島は自然がいっぱいで、島内散策には絶好の場所です。前述どおり加太港から20分、大阪から加太まで1時間半くらいですから、大阪からでしたら日帰りで気軽に行けるところでもあります。島全体もそれほど大きくありませんので、見るところ絞りさえすれば、1日で1周出来ます。
が、やはり自然が織りなす島。アップダウンはありますので、トレッキングシューズでないとちょっとキツイかもしれません。しかも炎天下の中を歩いたわけですから、身体に圧し掛かる負担は推して知るべし、と言うべきか… (´∀`;)
水分補給はしっかりと摂りましょうね。


折角の夏休みを利用しての紀伊路だったにも関わらず、3日共に炎天下の中を歩き続けるという過酷な休みとなってしまい、何だか損したような気もするのですが… (´∀`;)
まぁそれでも、3日ともいい天気に恵まれましたし、友ヶ島も悪天候で船が欠航するということもあるわけですから、行きたいところに行くことが出来た、ということだけでも感謝しなければなりませんね。

2013/08/20

[Travel Writing] 真夏の紀伊路 - 中編

さすがは白浜。南国情緒漂う街並みだけあって、朝からあっつい… (A´д`;)

というわけで、昨日の反省点も踏まえ、あまり無茶な行程は踏まず、風に吹かれながらのんびりと街を探検することにした、2日目の紀伊路でございます。
『白浜町』一口にとは申せ、海岸沿いから内陸に至るまで結構広く、見たいところ、押さえておきたいところは数あれど、炎天下の中欲を出し過ぎたらそれこそ昨日の二の舞… と思い、数は絞りつ、あまり広範囲には動かず、をテーマに、街中を歩き、街撮りを実施しました。しかし蓋を開けたら、どちらかというと街撮りじゃなくて沿岸沿いの自然風景を撮っただけのような気が… あまり街中にフォーカスして撮影しなかったというのは、ちょっと失敗だったような気がします。



丁度8月の真っただ中、ということもあり、朝6時台とは言え、既に白良浜には海水浴客が。さすがに浜を覆い尽くすほどの海水浴客ではないものの、白良浜のパラソルは既に全て予約済み。ほとんど人のいないところを撮りたいなぁ、と思っていたのですが、流石にそれは出来ませなんだ。まぁ、全く人がいなくて寂しい、というより、ある程度人がいた方が、人気のビーチとしての雰囲気も伝えやすくなるのでは、と。

レンタサイクルで自転車を借り、白浜は主に海岸沿いをぶらり。この白浜での街歩きで最も失敗したのが、海中展望塔。800円というそこそこ高い料金を払ったにも関わらず、内容はしょぼい… 黒潮の栄養分たっぷりの海流が、海中の窓ガラスをいい感じに濁らせ、折角窓から海中の様子を見ようとしてもよく見えず… 展望室も狭く何か面白い仕掛けがあるわけでもないため、個人的には非常に残念なスポットとして印象づいてしまいました。
と思ったら。
ここからは女子の皆さんに朗報。料金所から海中展望台に向かう短い屋外の道中、ふと横に視線をそらすと、崎の湯露天風呂の男子風呂が丸見え。望遠レンズや双眼鏡をお持ちの皆さん! 筋骨隆々の男の裸体を見るならココですよココ!!(爆)
……ちなみに女子風呂はしっかりとガードされており、見ることは出来ませなんだ。 (´・ω・`)
(ここまで女子の皆さんへの朗報)

白浜は、その名の通り大部分がビーチかと思ったらそうでもなく、切り立った崖や岩場の方が多くある、という印象です。そんな岩場に波が打ち付け、自然の景勝を見事に作り上げているのだと思います。その特筆すべきところが、千畳敷であり三段壁、といったところでしょう。
しかし、特に千畳敷はあまり単独で近づくなかれ、浜辺ではないから海水浴客はまずいないものの、やはり白浜は白浜。リア充の痕跡がいくつも散在していたのでした。 (´д`;)
ここら辺で、というかちょっと前から、この白浜を街撮りの対象にしたことを後悔したりしています。ここは野郎単独でブラブラ歩くところじゃねぇな、と… (´;ω;`)
とは言え、何かの縁で折角訪ねたこの地。時間の許す限り回ろうじゃないか、と、血の涙を目にいっぱい溜めながら進んでいったわけであります。
三段壁では、さらに地下の洞窟へ。灼熱の様な地上の暑さとは一変して、やはり地下は涼しい。荒々しい太平洋の海と波が作り上げた自然の奇勝を、心行くまで堪能しました。

最後は、白浜が生んだ巨人、南方熊楠の生涯が綴られている記念館へ。小高い丘の上に建てられており、記念館に到着するために、結構勾配のある坂を登る必要があるのでご注意を。
博物学者、民俗学者として、もはや歩く百科事典とも言うかのように、様々な学問へ探究し、多岐に渡って研究を続けた熊楠。特に植物などの収集は、目を見張るものがあります。これらの収集品の他にも、熊楠が生前交流していた学者仲間との手紙などの遺品も展示されています。僕も、こういった好奇心の向く分野に対し、自分が思う以上の収集癖があるので、小振りな記念館ながらもこういった展示を見るとワクワクしました。 ^^


白浜を後にして、一路大阪へ。SNSで知り合った人とお食事。その日は大阪で宿泊し、最終日は和歌山へ戻り、友ヶ島を目指すのでした。

2013/08/19

[Travel Writing] 真夏の紀伊路 - 前編

大阪から日帰りできる「ラピュタそっくりな島」友ヶ島』のサイトを見たことも一つの影響ではありますが、保存状態の良い廃墟が多くみられる、というのが僕の琴線に触れ、いつかは実際にこの目で見たいと思っていた友ヶ島。他にも、和歌山は秋の和歌山城、冬の高野山のみで、和歌山の街を撮ってみたいなぁ、という気持ちが、今回の和歌山旅を結構させた次第です。
しかし、紀伊半島の南端は、京都・大阪と違いそうそう簡単に行ける場所でもないため、この際だから紀伊半島を東から西へとぐるっと巡る旅にしよう、ということで、新宮→熊野→白浜→友ヶ島、という旅程を組みました。


新宮城熊野速玉大社

夜行バスでまずは新宮へ。初日は熊野詣でへ。流石に1日で熊野三山全てを回ることは不可能ですが、熊野那智大社に絞るつもりで旅程を組みました。そこへ行く途中で、新宮城を見に行こうと思っていたのですが、その近くに熊野速玉大社があったというのは不勉強でした…
新宮駅からも近く、熊野川の下流に熊野の大社の一つがあったとは。朝日に浴びた朱色の社殿、朝の空気と空の青のコントラストが絶妙で、清々しい空気の中、境内を歩きました。

しかしやはり真夏。早朝でもそれなりにじっとりと暑い空気が身体にまとわりつきます。それでも、早朝であるがゆえに、まだ何とか快適に歩くことが出来たのですが…
本当の地獄は、これからやってくるのです。 (´∀`;)


補陀洛山寺大門坂

青岸渡寺三重塔と那智の滝

熊野那智大社へは、那智駅から歩きで行くことにしました。7kmの行程ですので、バスで行くより歩きで行って、今は多くが舗装されているものの嘗ての熊野古道を感じながら足を進めるのもいいかな、と思った、のですが… (・ω・)
徐々に上り、容赦なく照りつける太陽。那智駅に到着した時には既に地面も空気もあっつあつ。当方、夜行バスで来たてでしかも朝は新宮城や熊野速玉大社を回ってきたところ。しかし、那智駅に到着した直後は、体力が猛烈に奪われる、なんてことは考えもつかなかったのです…

熊野古道を歩いていると、ところどころで山肌が露わになっている個所を目の当たりにしました。これは、1年前に紀伊半島を襲った大雨と洪水。ほとんどのところで復旧活動が実施されたものの、まだまだ工事中のところや不通となっている道もあり、熊野古道を歩いて行く際も、迂回せざるを得ない個所もいくつかあります。今でも工事現場には、懸命に復旧に当たる人たちの姿が。少しでも早く、元通りに戻ることを祈っています。

しっかしまぁ、大門坂へ至るまでの道程は、日陰という日陰はほとんどなく、歩けば歩くほど体力を奪われますね、こんな灼熱の日であれば。 (´∀`;)
途中の神社の水道で、首元や頭に水をかぶって、何とか涼を取りつつも所詮はその場しのぎ。すぐにお湯に近い状態になります。そんな中でも、水分補給だけは欠かさずに行ったものの、大門坂に到着した途端にへばってしまいました。
大門坂は、一部でやや急な勾配があるものの全体的にはそれほどまでの急勾配、というわけではなく、『普通だったら』すいすい登れるはずが、数歩歩いては休む、という何とも情けない熊野古道歩きとなってしまいました…

それでも、何とか到着した熊野那智大社と青岸渡寺。(しなくてもいい)苦労して到着したこともあって、境内から眺める青々とした紀伊の山と、遥か先に見える海の景色が見ごたえありましたね。
山の上にある大社だけあって、境内を歩き回るには石段の上り下りをしなければなりません。しばらくは時間があったため、さすがにすぐに動いたら一層体力を奪われるだろうと、境内でしばし休憩。それでも、那智の境内を行ったり来たりするのは結構体力を奪われそうな気がしますが… (´∀`;)
一方、那智の滝は、このところの少雨が影響して、ちょっと寂しそうでした。またいつか、雄大な姿を目の当たりにしたいですね~。



熊野那智大社を後にし、向かった先は、この日の宿泊場所である白浜へ。
白浜の名所と言えば、奇岩の景勝として知られる円月島。この日は夕方までよく晴れていたので、今日は円月島の真ん中の穴に入る夕陽が見れるかな! と思ったのですが…
この暑さで水平線の気温が高いことが影響してか、空気の層が邪魔をして、穴から差し込む夕日は見られず。折角その直前までの夕日は綺麗に見られたのに… orz

僕以外にも何人かの観光客や地元の人が訪れては、その瞬間を今か今かと待ちわびていたのですが、結局見ることが出来ず(聞くところによると、見れても1年に3回くらいの大チャンスらしい)、ぞろぞろと帰って行ったのでした。
まぁでも折角来たんだし、もうちょっと夕陽を撮影しようかね… と思っていたら。
水平線の雲と、夕陽の光が織りなす光の芸術がそこに。勿論穴から差し込む夕日がメインであったものの、これはそれと同じくらい、格別素敵な光景なんじゃなかろうか!! (゜∀゜)
ほとんど、というか全くと言っていいほど人がいない中、夢中になって写真を撮影しておりました。レンズ交換の際、センサーにゴミが入ってしまっていた、ということも知らずに。 orz