2011/11/19

[Movie] コンテイジョン

Contagion

【名】
1. 接触伝染(病)、感染、伝染(病)、病原菌
2. 悪影響、感化



自然災害にしても、伝染病にしても、限定された地域によって引き起こされた事象であり、他に避難場所、逃げ場所があるのであればまだしも、世界中、いや、地球上のどこにでも引き起こされた事象であって、宇宙空間にでもない限り、逃げ場所が無いような事象が発生したらどうなるか     
これは、それを実写化した作品。それも、出来る限りリアルに、今まさに現実空間でも起こり得そうな事象として描いている。

一番最初の映像が、『2日目』から始まる、というのがまた面白い。何らかのウィルスに感染した女性の病状が重くなり、次第に衰弱し、死に至る。その女性と何らかの形で接触した人も、さらにその接触した人が、さらに… という風に、ウィルスは爆発的に広がる。現在のテクノロジーは、船舶どころか、航空機による人の往来も簡単に行うことが出来るため、曾てのペストやチフス以上の広がり方を見せ、地球上であればもはや逃げ場所などどこにも無くなってしまうだろう。
そしてそうなった時、人は、まず『自分こそ』が助かるように行動する。相手が、友人であろうが恋人であろうが家族であろうが関係ない。全ては自分の、いや、自分『だけ』のためだ。そして人は、自分が今すぐにでも助かるためなら、それが何であろうと、十分な検証が行われていようがいまいが関わらず、我先に手を伸ばす。自分『だけ』が助かるための『何か』を手に入れるためならば、どんな手段をも厭わない。

「人間は、考える葦である」「人間は理性を持った唯一の動物」
そんな風に言われ続けていたとしても、やはり根幹は動物。自分の生命が危機に瀕していると知れば、どんな暴力、どんな略奪もしてしまうだろう。動物的本能の持つがままに。
しかし、それはそんな事態になることに対する警鐘を鳴らしているわけでもなく、そのウィルスを根絶しようとするための医師や薬剤師の奮闘記を描いているわけでもない。これらはあくまで物語の構想の一つに過ぎない。危機に直面した人間がどのような行動に出るのかを、ただ、淡々と表現するためのものだ。そう言う意味では、冷静に沈着にことを運び、ただ人を助けようと諸所奔走する者、己だけが助かりたいがために略奪を繰り返す者、守るべきもののために敢えて暴力を手にする者など、危機に対するありかた、自分の考え方、そこから出る行動が、その者の『人間性』として顕れている。


パンデミックそのもの、というより、人間の本性をリアルに、且つ暴力的に表現した、非常に興味深い作品の一つと言えよう。但し、こんなパンデミックが、現実に起ってほしくないとは考えるが。何せ、日本人にとってみれば、東日本大震災から、まだ間もなく、今も尚、疲弊の爪痕がそこかしこに残っているのだから…

そして、物語の最後に、ようやく『1日目』が明らかになる。本当の感染源は何か。『第1日目』を最後にして、全ての事と次第を見納める、という表現の仕方も面白い。



2011/11/14

[Movie] 三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船

アレクサンドル・デュマの冒険活劇『三銃士』の映画化作品。これまでにも何度か映画化されていますが、それは17世紀のフランスやイギリスを出来る限り忠実に描写したもの。本作は、『ライラの冒険』よろしく、まるでパラレルワールドでもあるかのようなスペクタクルな世界観(勿論、『三銃士』そのものが架空であるのですが…)。単純に『三銃士』の物語をそのまま映像化したに囚われず、如何にそれをエンターテインメント作品に仕上げるか、というところに重点を置いた作品だと思います。中世ヨーロッパの世界観とは懸け離れていますが、懸け離れすぎているわけではないところも見所。有り得ないけれどもしかしたら有り得たかもしれないところが、本作の世界観の魅力、というところでしょうか。

また、そんなスペクタクルな世界観にプラスして、各キャラクターのアクションシーンの数々。特に、ミレディに扮するミラ・ジョヴォヴィッチが、アンヌ王妃の部屋に忍び込む時のシーンなんか、まんま『バイオハザード』じゃん! と見紛ってしまうくらい。しかし、それも敢えて狙って製作しているんでしょうね。勿論、リュシリュー枢機卿の護衛に対し己の腕と剣で戦う、ダルタニアンと三銃士のアクションも見逃せません。こちらも、妙に『300』と見紛うようなシーンの連続。やはり、エンターテインメント作品に仕上げるにはどんな要素も盛り込んじゃえ! 的な意気込みが窺えます。それが良いか悪いかについては別として(汗)。
それでも、全然カオスな作品にはなっていませんね。若干、リュシリュー枢機卿が王と王妃を貶めようとする描写が、少し端折り気味なところがあるものの。


本作では、ミラ・ジョヴォヴィッチの他にオーランド・ブルームも登場しています。元々彼らが出演する作品も観ていまして、それもヒーロー・ヒロインとしての作品を観ていました。この映画の公開が発表された当初はそんな役柄なのかな、と思いきや、ミラ・ジョヴォヴィッチが扮するミレディは、二重スパイの性悪女。色んな男を手玉にとっては、騙しに騙し、自分の思う通りの手の内に、まるで駒のように進めていく。一方のオーランド・ブルームはフランスのルイ13世を見下すイギリスのバッキンガム伯爵を怪演。登場シーンとしてはそれほど多くないとはいえ、その悪役ぶりは、スクリーンからでもノリノリなのが窺えます。

ちなみに、本作は3D版も公開されており、勿論、そちらを鑑賞してもいいかと思います。でも、やはり本作も元々は2Dで作成し、その後の編集で3D化にした作品であるため、3D化した時の迫力においては、『アバター』や『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』よりは落ちるかもしれません(それでも個人的には、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』よりかはいいかと思いますが…)。


2011/11/12

[Movie] ステキな金縛り

エンターテインメント作品の真骨頂、三谷幸喜監督の作品はやっぱり面白かった! というのが率直な感想です。「あー、面白い映画を観た!」という充足感は、(個人的にですが)『ザ・マジックアワー』以上だったかもしれません。
『デスノート』のような『名前を書くと死ぬノート』のように、『幽霊という見えない存在が裁判で証人台に立つ』という設定は、何ともベタな設定と思っていたのですが、それでも面白く、しかも筋道を立て、要所要所で盛り上げていくのも凄い。昨今、既出の漫画を題材にしたり、既成作品をリメイクしたりなど、ドラマにオリジナリティが欠けていると実しやかに叫ばれていますが、見渡せばちゃんとあるじゃないですか! と言いたくなります。

本作では、メインキャラクターに、これまでの三谷監督作品では、あまり、またはほとんど見られなかった俳優さん達が起用されているように思います。その分、新鮮味があるように受け取りましたが。あ、西田敏行さんはもはや別格ですね。勿論、佐藤浩市さんや唐沢寿明さんなど、おなじみの顔がカメオで出演。ここらへんはもはや定番ということで。
割と真面目だったり、落ち着いたキャラクターを演じている印象を受ける、中井貴一さんや、市村正親さん、竹内結子さんも必見です。固定化された役柄という印象を打破し、コメディ作品でも光っていました。特に、中井貴一さんの、死んだ愛犬の幽霊があの世から(一時的ですが)現世に戻り、その愛犬とじゃれ合うシーンが一番印象的です。傍から見ればエアドッグ(笑)。幽霊が見えない人たちからすれば、「一体何やってんの?」的なところに、爆笑してしました。
勿論、幽霊が証言台に立つ、という作品ですから、大元の事件があるわけです。が、その事件のオチも秀逸。冷静に考えればこれほどあっさりした法廷闘争もない、とお思いでしょうが、そこに漕ぎつけるために、実在の人物も既に亡くなった人物もあの手この手で色んな策を練って法廷闘争に挑む、その過程が面白いんですね。

また、本作では、所々で三谷監督がフィーチャー映画作品の要素が盛り込まれているそうです。と言ってみたものの、それを細かく紹介できるほど私は映画に詳しくないですし、パンフレットを見て「ああ、なるほど!」と後付けで思ったクチですので、大声で通ぶっているように「実はこのシーンでこの映画が云々」とは申し上げられません。ですので、ここは、皆様ご自身でご確認下さい…


『ザ・有頂天ホテル』でも『ザ・マジックアワー』でも、ラストのシーンはこれまでの登場人物が(ほぼ)総出で、ラストらしく賑やかなシーンが繰り広げられますね。今作ではちょっとしっとりめ。全編が笑いに包まれていますので、ジンワリと来るラストかと思いますが、勿論、そこでも笑いの要素は欠かせません。
また、本作の主題歌は、深津絵里さんと西田敏行さんがユニット組み、KANさん、中井貴一さん、阿部寛さん、小林隆さんが『法廷ボーイズ』としてコーラスを担当しています。凄いきれいです。こちらも聞き漏れなさいませんよう!