2013/06/22

[Travel Writing] 茅葺の長閑な里

京都と言うと、やっぱり一番最初に思い浮かべるのが、世界遺産にもなっている京都の社寺。その多くが、京都市街地や宇治の方に集中しており、海外から訪れる観光客も、やはり京都市街地の社寺を中心に回っているのを多く見かけます。それはそれでとても素敵なのですが、京都市街から抜けて、山間部の方へ行っても、心が安らぐとても素晴らしい場所があります。
南丹市美山にある『かやぶきの里』もその一つです。



今回『かやぶきの里』への旅は、ツアーを組んでいきました。とは言っても、亀山駅もしくは園部駅からバスで『かやぶきの里』へ行き、到着したら自由行動。じっくり里山を散策し、写真撮影に精を出していました。
亀山駅への道程は、初めてトロッコ列車を利用しました。1989年にルート変更された山陰本線の嵯峨嵐山~馬堀間の旧路線を活用したもので、保津峡沿いを走る観光路線として生まれ変わった路線です。トロッコ列車ですので、基本的に窓ガラスはありません。晴れていれば心地よい風をそのまま感じることが出来ますが、当然雨が降れば、雨粒が車内に降り注ぎます。それはそれで一興、ということで。 ^^;
トロッコ嵯峨~トロッコ亀山間という短い間ではあるものの、峡谷の中の列車、そしてそこから見える光景は、普段の忙しい日常を忘れさせるには十分すぎるくらいでした。このトロッコ列車は、途中途中でライトアップ用のライトが設置され、紅葉の季節になると、朱に染まった紅葉を灯りが煌々と照らし、幻想的な光景を見せるのだそうです。個人的には、紅葉の季節よりはこういった新緑の季節の方がいいのかな、と。


トロッコ亀山駅からバスに乗り換えて、園部駅を経由して『かやぶきの里』へ。滞在時間は約3時間半。短いと思っていましたが、だからこそ、くまなくじっくりと園内を散策してきた次第です。



美山は、現在は南丹市に合併されていますが、かつては京都府内の町村の中で最も大きな面積を持つほどの町で、豊かな緑と清らかな水に囲まれている風景は、今なおその姿を留めています。また、日本の農村の原風景ともいえる風景が色濃く残ることから、茅葺き民家の集落は国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されています。
折しも初夏の季節、まだ咲きそろうには至っていないものの、色鮮やかな紫陽花と、朱に染まった鬼灯がお出迎え。時折、弱い雨が降り注ぐ様子が素晴らしく、基本的に雨はあまり撮影には向かないものの、雨だからこそ感じられるその風景は、写真に収めるには絶好の光景だったと思います。 ^^

余談ですが、この時初めて、撮った写真に『香り』を伝えることが出来ないか、と考え始めた次第です。荒唐無稽な話かもしれませんが。雨の降り注ぐ写真を見ただけで、梅雨ならではの香りが伝わる… そんな1枚。当然、自分自身はそれを感じたからこそ写真に収めたわけで、それを伝えることが出来なければ意味が無いわけです。それも、何も情報を伝えられていない人に対してもダイレクトに伝わるような…
ただ美しい写真を撮るだけでなく、それに何を込めるか、撮れば撮るほどそのテーゼが身体の奥底から湧き出、その都度悩み苦しむわけになるのですが。 ^^;



『かやぶきの里』を散策中、小さなギャラリーを発見しました。『ちいさな藍美術館』。藍染作家、新道弘之氏のコレクションが展示され、また彼の工房ともなっています。
茅葺の家を改装して作られたギャラリーのため、美術館としては狭く、展示品もお世辞にも多くは無いかもしれません。が、彼の作った作品の一つ一つが、とても素朴ながらも、丁寧で、繊細で、一つ一つの作品にとても真剣に向き合っているのが伝わってきます。古くから、世界中で愛されている藍染。小さいながらも、その大きな歴史の流れと共に、美しい作品の数々に触れることが出来た瞬間でした。


今回の旅は、ツアーということもあって行動範囲も狭く、南丹市でもまだまだ数多くの見どころ、地区ならではのスポットがあるのですが、今回はここまで。こういった歴史ある集落以外にも、「京都は何も市街地の社寺だけじゃないんだぞ!」と言わんばかりのところが数多くある、そんなことを感じることが出来た旅でもありました。

2013/06/08

[Travel Writing] 様々な顔を持つ水の豊かな街散策

「現存十二天守を全て見て回ろう!」

という気持ちが以前からあったわけではないものの、日本の城址を巡り、またその趣味をお持ちの方々との交流を深めていくうちに沸々と湧き上がっていきまして。湧き上がっていた時には既に現存天守は半分以上廻っていたのですが。 ^^;
2001年に訪れた、愛媛県 松江城を筆頭に10数年、ようやくその念願が叶いました。最後に回った現存天守、福井県坂井市 丸岡城です。


事前に、見た目ほど大きくない、という情報を入手しておりましたので、それほどガッカリ感は無く。ただ、天守内に入るならともかく、敷地内に入るにも300円は… というのが正直な感想。まぁでも重要文化財ですし、城の敷地全ての保護のため、と思えば、と。 ^^;
丸岡城はご存じの通り桜の名所でもあります。故あって桜の季節に行くことは出来ませんでしたが、5月下旬~6月は、赤を基調とした美しい皐月がお出迎え、桜ほどの華やかさは無いものの、それでも、城を美しく彩っていました。


丸岡城訪問がメインの目的の一つであるものの、見物してじゃぁさようなら、というのもつまらない。やはり来たからには、もっと色々と見て回りたいなぁ、よし、坂井市の街撮りしよう! ということで、電車やバスを乗り継いだり、歩いたりしながら坂井市をPhotowalk。今回特に注目したのが、
  • 丸岡~春江に広がる田園風景
  • 三国の古い街並み
  • 東尋坊
です。




360度、視界いっぱいにどこまでも広がる田んぼ。田植えが終わったばかりのようで、どこの田んぼにも水が一面に湛えてありました。上空に広がる青空が水面に移り、初夏の爽やかな風を受けて、植えたばかりの稲の若葉が気持ちよさそうに揺れていました。
季節は、春から夏へ。少し湿気を含んでいるものの、気持ちの良い風が心地よく吹き抜けます。やはり稲作の町だからか、街中を歩くと、至る所に水路が張り巡らされ、滔々と水が流れています。この季節ならではの風景。水の豊かな町、という印象を受けました。

丸岡駅で電車に乗り、芦原温泉でバスに乗り換えて三国へ。三国でレンタサイクルを借りて、まずは東尋坊方面へ。
レンタサイクルは福井市内と三国(~東尋坊)の方しかなく、丸岡・春江界隈では無いんですよね。そう言えば、バスの路線図を見ても、丸岡・春江界隈は全くの運行しておらず。需要が無いのかな? 他には、福井もしくは芦原温泉~三国でレンタカーを借りて回る、という方法が挙げられますが、いずれにしても交通面で空洞が出来てしまったいるのがちょっと不便に感じました(そういう街づくりを目指しているのならいいのですが…)。

実は東尋坊は今回が2回目。前回は、どんよりとした厚い雲に覆われて、見るも何ともさびしい感じがしましたが、今回は青空の下、清々しい空気の中で東尋坊の景勝を見て回ることが出来ました!
……が、日も上がり、海岸沿いは松林にでも入らないと日差しを避けるところが無いので、暑いこと暑いこと… (´д`)
僕は暑いのは慣れていますし好きですが、当然それにずっとひたっているほど頑丈な身体づくりでもありません。日焼け対策は万全に。あと、東尋坊タワーを始めお休み処はいくつかありますから、そこで涼をとるのもいいかもしれません。
あ、東尋坊タワーは上りませんでした。一回目に訪れた時の率直な感想「大して面白くなかったから…」 (・ω・)

前回は東尋坊止まりでしたので、今回はさらに自転車を走らせて、雄島~越前松島へ。ここでも、松林の中でなければ、自転車を走らせている中でモチベーションが挫かれていたかも… ^^;
それにしても、東尋坊や越前松島といい、本当にこの海岸線は奇岩ばかりで。地学大好き(高校の専攻は生物(←聞かれてない))人間としては、その地形の出来上がり方、ひいては地球の鳴動に、ただただ息を呑むばかりでした。特に東尋坊は、海食によって岩肌が削られ、30m近い岩壁や岩の柱が続くのですが、東尋坊ほどの規模を持つところは世界的に珍しく、地質学的にも重要な場所なのだそうです。ジオパークにも登録されていそうな場所かと思いましたが、意外にも登録はされておらず。何か条件でもあるのでしょうかね… とはいえ、福井県には勝山市に『恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク』があります。次はここを訪ねてみようかな、と思います。

これだけの風光明媚な場所であるにもかかわらず、東尋坊は自殺の名所と言う不名誉な謂れがある、というのは確かです。自殺を考えている人に、もう一度家族と連絡を取ってほしい、大切なものは何かを見つめ直してほしい、ということで、電話BOXが設置され、そこには、自殺予防相談場所への連絡先と、常に通話が出来るように、と十分な数の10円玉が。政府や自治体も、自殺予防に様々な対策を打って出ていますが、それでも限界はあり、企業や家族の努力も併せて必要になるんだろうな、と考える今日この頃です。


しかし、越前海岸の自然の造形美にうっとりしているうちに、容赦なく時間が過ぎ、いつの間にやら帰る支度をしなければならない時間に!
まだ三国の街並みを十分に堪能していないのにー!
急いで三国湊町に戻り、残り少ない時間を使って界隈散策。しかし、思うようにじっくりと見ることが出来なかったのは、僕の時間管理不足の致すところ。また今回もやっちまったか… と反省しきりです。
江戸から明治にかけて、越前の港町として栄えた三国。その時代の商家や社寺の面影が、そこかしこに覗いています。単に、田畑や自然造形の美しさだけではないんですね。地区によって様々な様相を見せる、というのも、坂井市の魅力的なところではないかと思います。



丸岡城 (Maruoka Castle) 東尋坊 (Tojinbo)
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