2012/02/18

[Movie] はやぶさ 遥かなる帰還

夢を見ることは誰にでも出来る。でも、その見た夢は、並大抵のことでは叶えられない     

それを心の底から実感した、フィクションとは言え、非常にリアリズムに徹底した作品だと思った。


『はやぶさ』プロジェクトに関わって、自分がやりたいこと、叶えたいこと、進みたい道を考え、選ぶ物語構成である『はやぶさ/HAYABUSA』。何年もかかる、失敗する可能性も否定できない、それでも諦めきれない夢に向かって突き進む、この作品も勿論そういう側面があるが、そのためにはあまりにも現実的。言葉で言い表せるような、また、報道で垣間見えるような『物語』の裏に潜む、絶望にも近いリアル。
それでも、登場人物が諦めきれない思いを持ったのは何だろう。これは、『夢』を支えるための人々の『精神力』や『忍耐力』にも問いかける問題でもある。

この作品を通して、壮大過ぎる『夢』を叶えるために必要なのは、何よりも『資金』である。そしてそれが、物語を一層深く、且つ現実的な作風に仕上げている。

『はやぶさ』を搭載したM-Vロケットの打ち上げ。その時の打ち上げ施設に、NASAの職員を招いたが、その時の施設のボロボロ感、打ち上げた時の振動で舞い散る埃に辟易し、『ボロをまとったマリリン・モンロー』とまで揶揄された。アメリカの衛星打ち上げより約1/10の費用で賄える日本の宇宙開発事業、といっても、あまりにもみすぼらしい姿は、日本の科学者ですらも辟易しかねない。
しかし、長年に続く研究を実施するためには、継続して資金を提供してもらう可能性がある。『はやぶさ』飛行中に何度も訪れる苦難、通信が途絶えてしまう絶望。それに追い打ちをかけるのが、文部科学省からの予算打ち切りの危機。「そんな遠いところの石を持ち帰って、一体何の役に立つの?」。その言葉が、一体自分は何のためにこの事業を続けているのかを問いかける便になる。
また、この事業には、数々の企業の先端技術が多数揃っている。担当部署や社員は、こぞってこのプロジェクトに参入しただろう。何せ、自分の会社こそ、宇宙開発に欠かせない、という技術アピールにもなるからだ。だからこそ、利益を追求する企業としては、このプロジェクトに参加するための見返りが無くてはならない。単に友達気分で参加するわけにはいかないのだ。本来であれば、夢のある仕事を行うには、企業方針はそっちのけでやりたい時もあるだろう。しかし、利益を出せなければ、企業から干されるだけ。家族を養えなくなる。「僕はメーカーの人間なんです!」その言葉には、どんな思いが込められているのだろう…
そして、『はやぶさ』開発の際に取り巻く人間模様にもまた、金の問題は付きまとう。折角、宇宙開発に欠かせない部品を作ったのに、末端の街向上であるが故に、その経営は火の車、経営者の社長の苦悩、時々訪れる娘にお金を借りなければならないという屈辱。その娘はジャーナリストで、宇宙開発の部品を作っている父親の背中を見て育った。当然宇宙開発に興味を持ち、ジャーナリストになる。しかし、仕事だけ、理想だけを追い続けるには、現実はあまりにも厳しい。経営難に陥っている父、結婚し子供も出来たが、コンサルタントに手を出した夫はこれまた事業に失敗し借金を負うことに。その後は離婚して、シングルマザーとして子供を育てている。


どれをとっても、夢を語るにはお金は切って離すことは出来ない。夢を見ることは出来ても、それを実現することはあまりにも遠く、難しく、大抵の人間であれば、途中で挫折して諦める、もしくは妥協案で自分を納得させる。また、どんなに一つのプロジェクトを複数の人間で推し進めようとしても、そこには様々な利益や思惑があり、一つにまとめ上げるのは難しい。卓越したリーダーシップを発揮する人でさえ、その都度至難を極めるほどだろう。
『はやぶさ』が帰還し、そのカプセルの中に僅かながらのサンプルが込められていた。何度苦難に陥っても、決して諦めない気持ちを持つことが大切だと、日本中が歓喜に沸いた。しかし、この作品を見ると、『諦めない気持ちを持つことが大切』という言葉だけでは、到底言い表せない現実的な艱難辛苦が込められている。どんな美辞麗句を募ったとしても、所詮それは表面的であり、限られた時間内のインタビューで語られる表層的な言葉に過ぎないのだ。

本当に夢を叶えることとは、一体何なのか。今一度、私たちに問いかける、それこそ『現実』を鋭く突きつける作品である。



2012/02/14

[Travel Writing] 空と海と陸で日本横断旅 - 滋賀編

空と海と大地を駆け巡る、日本横断の旅。その最終章は、滋賀県 長浜市です。

雪の長浜城雪の慶雲館

昨日までに降った雨のせいか、折角いい感じに積もってくれた雪も、ある程度融けてしまったようで… それでも、雪に覆われ、ほとんど誰もいない長浜城公園は、深閑な雰囲気に包まれていました。
長浜城は、城そのものが博物館となっており、豊臣秀吉(当時は羽柴秀吉)の築城として有名ですね。昨年のNHK大河ドラマ『江 ~ 姫たちの戦国』の舞台の一つでもあります。
やっぱり、こんな雪の積もる寒さですから、館内も寒い!(外よりは幾分かマシですが… ^^;)

本来は、長浜城のみが目的だったのですが、それだけではつまらないと、長浜駅周辺を少し散策。駅のすぐ近くに、『慶雲館』と『長浜鉄道スクエア』へ。

慶雲館 盆梅展 - 一慶雲館 盆梅展 - 二

慶雲館 盆梅展 - 三慶雲館 盆梅展 - 三

特に『慶雲館』では、盆梅展が開催されていました。
館内を彩る、様々な梅の盆栽と、館内をほのかに漂う梅の香り… そとは冷たい空気だったので、一足早い春を感じることが出来たと思います。
何よりも、盆栽と言うことで、その美しい佇まいには、ただただ息を呑むばかりでした。盆栽のことは全く分からないのですが、一目見ても、華美すぎるものだったり、我ぞと主張しすぎるようなものはなく、さりげなく、且つ静謐なまでの美しさは、やはり日本人・日本文化ならではのものではないかと感じます。

旅の最後を締めくくるイベントとしては、とても有意義なものだったと思います。



そう言えば、僕が長浜を訪れる前に、長浜でSLが走るイベントが行われていたんですよね… もうちょっと早くくれば見れたかな、と、ちょっと後悔。(・ω・)

2012/02/13

[Travel Writing] 空と海と陸で日本横断旅 - 三重編

雨天って言うのは、基本的に撮影に向かないと思っていたんですよ。梅雨時の紫陽花とか、まさに雨ならではの楽しみとして撮影する、というのを除いては。
でも、考え方によっては、雨天であればこその楽しみもまたある。要は、その時の天気の使いようである、と…

愛媛からさらに東へ移動するも、しとしと雨は変わらず降り続きます。結局のところ、その日は日が暮れ、夜になっても雨は止まず…
ですがむしろ、これはチャンスと思いました。これから行くところは、三重県 桑名市の『なばなの里』。とある旅行代理店のパンフレット(冬版)を見て、『なばなの里』のイルミネーションの美しさに瞬く間に惹かれ、行くことを決断したのです。この日は平日。そして雨。入場者も少ないのでは、と楽観的に考え、移動していったのはいいものの… よくよく考えたら、屋外のイルミネーションということもあり、雨天中止の可能性もあるのではなかろうかと、ちょっと不安がよぎったりもしました。

幸い、『なばなの里』へのバスは通常通りちゃんと動いており、イルミネーションも、通常通り開催していたとのこと。冷たい雨が降っていることも手伝って、入場者は少ない…… と思ったのですが、同じことを考えているのでしょうか、僕が思う以上にはやはり人は来ていたと思います。^^;
気を取り直して、園内のイルミネーションを堪能。その光景は、今まで見たことも無いような絶景、正に異世界の経験でした。

なばなの里のイルミネーション - 一なばなの里のイルミネーション - 二

なばなの里のイルミネーション - 三なばなの里のイルミネーション - 四

なばなの里のイルミネーション - 五なばなの里のイルミネーション - 六

『雨』が、この光景を見事に助けていたんだと思います。
例えば、わざとフラッシュを焚くことによって、降る雨に光が反射し、あたかも雪が降っているような演出をすることが出来ます。また、地面が濡れているため、特に『光の回廊』のイルミネーションは、頭上の光を楽しむものですが、濡れた地面に反射した光も同時に楽しむことが出来ます。飛び込んできた光景全てがイルミネーション! まるでSFの世界を歩いているかのようでした。
その上、人がほとんどいませんでしたので、光を主体とした写真を撮り放題。これもまた、極上の世界でしたね。冷たい雨に打たれ、傘を差しながらの撮影でしたけど。^^;

そのおかげもあってか、『光の回廊』の写真は、PanoramioでPrizeをいただきました。投票して下さった皆様、有難うございました。^^
『なばなの里』という公園の通り、基本的には季節の花々を楽しむ公園なのですが、こうした大規模のイルミネーションを楽しめる期間もあるんですね。東京では、スポットの箇所数こそ多いものの、1か所におけるここまでの大規模なイルミネーションは無いかもしれません…

[Travel Writing] 空と海と陸で日本横断旅 - 愛媛編

今回の旅の大きな目的2つ目、それは氷結した白猪の滝を見ることです。

昨日のうちに、臼杵市から定期フェリーを使って愛媛へ。久しぶりのフェリー。これでこの度は、宮崎への空路、鉄道やバス等の陸路、そして海路も利用したことになります。臼杵から八幡浜までの所要時間は約2時間。太陽が西日となり、燦然と輝く様相を見て、海風にあたりながら、東へと向かいます。
宿泊は松江市にて。そこから、早朝の電車に乗って、東温市まで向かいます。白猪の滝は、横河原駅からバスで約30分、バスに揺られて白猪滝口バス停に到着。さらにそこから、約30分、山道を歩きます。
基本的に滝川に沿った道のりで、森の中です。途中まで道路は舗装されているものの、雪解けの水が凍てつく朝の空気に触れて凍り、ところどころで滑ります。歩く際は、細心の注意を払った方がいいかもしれません。

折しも、この日は平日。普段なら、学校や職場に向かっている人たちばかりでしたから、僕が行く道は全くと言っていいほど人はいませんでした。白猪の滝にも、誰かが来たような気配はなく、ほぼ独り占め状態です。^^

白猪の滝 - 一白猪の滝 - 二

 「白猪の滝に、どうして行こうと思ったんですか?」
愛媛出身の知人に尋ねられた言葉。何故と言われても、答えは、その雄大な姿をこの目に焼き付けたいから。ただ単にWeb上の写真だけでは飽き足らず、実際にこの目で見て、この耳で聞いて、この身体で自然の全てを感じ取る。それこそが、旅の醍醐味だと思うんです。
そしてそれは的中し、誰もいない森閑とした空間の中で、一人、氷結した滝を見ながらの時間は、正に極上と言えます。
愛媛では、ここ連日の暖かさが影響してか、完全氷結とは言えず、一部が融解していました。それでも、眼前に広がる自然の神秘には、ただただ、息を呑む以外に他ならないのです。

しかし、一旦滝口から降りると、そこはしとしとの雨。加えて寒気の影響で、宮崎と同じく早咲きの梅ですら咲き揃っておらず、松江の市内を巡っても、ちょっと寂しい限りでした…
桜にしろ梅にしろ、本当に花の季節は読みにくい。飛行機のチケットは1か月以上前に予約しているのですから、尚更ですね。
また、愛媛には他にも、行きたいところ、見たいところがたくさんあるのです(『肱川おろし』とか)。47都道府県全てを踏破したと言っても、まだまだ既成事実に過ぎず、実のところ、知らないところはたくさんあるんですね。そういうところをくまなく歩いていきたいですね…

2012/02/12

[Travel Writing] 空と海と陸で日本横断旅 - 大分編

今回の旅には、大きな目的が2つあり、そのうちの一つが、大分県 湯布院にあります。

由布院は、僕の前に両親が旅をしまして。その時注意されたのが、『金鱗湖』の小ささでした。両親が大分へツアー旅行に行った際、ガイドさんに、「皆さん、間もなく金鱗湖に到着しますが、決してがっかりしないで下さいね!」という前押しを言われたそうで。一体何のことかというと、湖と言うには小さく、それはまるで池のよう。一目見渡すだけで全体が見えてしまう、というところにがっかりしてしまったそうです… 加えて、季節は夏。気温が高く、金鱗湖に注がれる温泉の湯気による幻想的な光景は全く見ることが出来なかった、とか。^^;
そこまで聞くと好奇心をそそられるのが世の常。宮崎から北上し、まずは由布院にて一泊。まだ日の出も無い、薄暗い朝5時。暗い温泉街の街道を歩きながら、金鱗湖に向かいました。

早朝の金鱗湖 - 一早朝の金鱗湖 - 二

指先まで凍てつくような寒さ。こんな中に、それも朝早くから、1時間以上もいるというのは、正直どうかしているかもしれません。しかし、目の前に幻想的な光景が飛び込んでくるのであれば話は別。少しずつ明るくなっていく寒空の下、金鱗湖に注がれる湯気がたちまち気化するも、冷たい空気に触れて霧に。その霧が、あたり一面を幻想的な光景に仕上げていくのです。
やがて時間が経過し、徐々に空も明るくなります。由布岳の山麓から太陽が見え、その光が当たり一面を照らします。丁度、西側の山々が太陽の光に照らされ、朝の美しい光景を作り上げていました。まぁ、その時には、既に手の感覚がほとんど麻痺していたのは言うまでもありませんが… ^^;


由布院の朝の温泉街を散策した後は、大分市→臼杵市へ。

府内城春日神社

臼杵城址からの風景卯寅稲荷神社

府内城などの歴史的文化財があるにもかかわらず、あまりクローズアップされていないところが気になりましたね… 僕の情報収集力や街歩きが足りなかったかもしれませんが。あまり、極端な一面でしか見ることをせず、もっとじっくり回るべきでしたね。時間的な集うは個人的には言い訳。街のことをよく知るには、しっかりと歩くべきだと思います。
そうは言っても、府内城は鎌倉から戦国時代にかけて続く名門・大友氏の居城。その後は数奇な運命を経て、第二次世界大戦の空襲にて消失してしまいます。失ったものはもう戻らないし、新しく建てたところで、結局のところそうにしか見られない、という側面もある。維持するにも財政的な問題もありますし。
色々な状況を鑑みて、致し方ない部分は数多くあれど、そのまま忘れ去られていくというのはあまりにも忍びない。どこにでも歴史はある。大分にも歴史あり。その拠点として、これからの大分の礎となってくれれば、と思います。

ちなみに、臼杵市も、当初は愛媛へ移動するためのところとでしか旅程の計算にいれていなかったのですが、意外や意外、石仏や醤油の製造で有名だったなんて! これは、旅の途中の、正に行き当たりばったりで出会える醍醐味でもありますね! 次の機会は、そういった地元産の文化を愛でながら、旅することにしましょう…

そして、この大分県の旅を以て、47都道府県、全てを踏破しました。細かいところを上げれば、まだまだ行っていないところはありますし、1度しか行っていないところも沢山あります。挙げればキリがありませんので、おいおい、回ってみようと思います…

2012/02/11

[Travel Writing] 空と海と陸で日本横断旅 - 宮崎編

空と海と大地を駆け巡る、日本横断の旅。これまで、ちょこちょこと方々を駆けずり回ってきましたが、いよいよ、残り2県となりました。そのうちの一つ、宮崎県へ。

宮崎神宮紀元祭の巫女の舞

まずは、宮崎市に鎮座する宮崎神宮へ。折しも、訪ねた日は2月11日 建国記念日。丁度境内では、神武天皇の即位を祝う、紀元祭が催されていました。厳粛な空気の中で執り行われる祭事、巫女の舞、そして剣舞。日本古来より連綿と培ってきた伝統が催される様は、正に僕が長年目にしたかったものでもあります。
宮崎神宮は、雰囲気としては、明治神宮や伊勢神宮とよく似ています。日光が降り注ぐ中でも、やや薄暗い森の中、文字通り森閑とした雰囲気に包まれています。一方、参道を抜け、拝殿に到着すると、一気に開けた場所になります。


宮崎神宮を後にし、市民の森・シーガイアへ。2月とは言え、日差しがあるからかそんなに寒くありませんでした。ですが、この冬の大寒波の影響は、ここ宮崎にも及んでいるようで、早咲きの梅も、まだほんの一部しか咲いていないようでした。

咲き始めた梅の花 - 市民の森公園フローランテ宮崎

そんな中でも、早咲きになるように調整された花々が、シーガイアの花壇を彩っていましたね。いち早く、春を満喫することが出来ました。^^
またシーガイア近辺は、数々の神話が息づく場所でもあります。市民の森とシーガイアを挟んだところにある江田神社は、伊弉諾と伊弉冉を祀り、延喜式にも記されている由緒正しい神社なのだそうです。小ぢんまりとした佇まいですが、参道の入り口には、(新しく製作されたものですが)天照・月読・素戔嗚の像が建てられています。また、市民の森の奥深くに、やや大きめの池があります。伊弉諾が黄泉の国での穢れを清めるための禊をした『みそぎ池』ですね。周囲にはいくつか紙垂が取り付けられていたことから、ここが神聖なる場所だというのが分かります。

初めて訪れたところではあるものの、まだまだ行き足りないところがある宮崎の旅。今回は、少し既成事実を作るような勢いがありましたが(汗)、次は、しっかりと目的を持った旅がしたいなぁ、と考えています。特に、高千穂や西都原古墳等、神話が息づく場所を歩いてみたいですね。