2014/05/31

[Review] アナと雪の女王

初めて、一つの物語の中にディズニー・プリンセスが2人登場するディズニーアニメ。そして、ヒーローとヒロインの愛ではなく、プリンセス(一人はのちにクイーン(女王)となる)たち『姉妹』の愛と絆が試される物語。
本場アメリカでも空前の大ヒットとなり、その話題は海を越え、既に日本国内でもエンターテインメントの話題の筆頭として席巻しています。コミカルテイストなミュージカル・アニメという、受け入れやすさもさることながら、物語の最初から最後までコミカル、というわけではない、その時折に見せる主人公たちの葛藤が、自分自身を投影しているから、なのでしょう。

特に、YouTube等で話題沸騰なのが、主人公の一人で、姉の方であるエルサが歌う『Let It Go』。英語のみならず、松たか子が歌う日本語版も、国内だけでなく海外からも高い評価を受け、果ては25か国語をつなぎ合わせた映像までが、短期間で再生回数が数百万を超えるヒットに。


米アカデミー賞長編アニメ賞にも輝いた今作の人気について、専門家によると、『Let It Go(ありのままで)』にも含まれる、この作品が訴える主題の一つである、「ありのままに生きる」ということ。
人はどうしても、多数派を作ってしまい、また自分の意見をその多数派に同調しがち。自分が少数派であると、たちまち周囲は自分を『異端』と見做し、排除しようとする。そうすると、人は自分を抑え、堅苦しく他人と同調しなければならないとしようとする。
でも、どんなに自分を抑えても、自分が自分であることを変えることは出来ず、また最後に自分を信じられるのは、自分しかいない。そんな『世相』の堅苦しさから、己を解放する、ということをメッセージとして盛り込んだことが、このアニメが受け入れられた所以、というわけです。

さらに、もう一人の主人公で、妹であるアナを助けるためにクリストフが助けを求めたトロールたちが歌った『Fixer Upper(愛さえあれば)』にも、「彼(彼女)は完璧じゃない」というのも、受け入れられた要素の一つ。人は完璧じゃない、だから互いに手を取り合って生きていくんだ、というメッセージが、孤独に苛まれている現代社会を投影しています。

さらに、今回の最大の見せ場は、『姉妹』の絆。つまり女性同士。これと『Let It Go』の「ありのまま」というのが、同性愛のカミングアウトを助長している、という主張があるようで……
この作品を鑑賞した後に、その主張の記事を見て、「そんなふうには感じられなかったけどなぁ。これは姉妹の絆の物語なんじゃないか」と思ったのですが、いざ記事を見た後で再度この作品を鑑賞すると、どうも『同性愛』的な視点が前のめりに出てしまい…… (´д`)
結局のところ、指摘しなければ済むことで、指摘することによってそんな視点を助長したり、「もうそうにしか見えなくなった」ということに繋がってしまうんじゃないか、と勘ぐってしまうんです。


閑話休題。

今作は、英語版を先に鑑賞し、その後日本語版を鑑賞したのです。
率直な感想を書くと、作品のテンポとしては、やっぱり英語版を元に制作されたんだなぁ、と感じずにはいられませんでした。決して日本語の声優を務めた方々が悪い、というわけではありませんが、日本語化すると、何だかテンポが速過ぎに感じてしまい、折角の作品の魅力も、日本語の魅力も中途半端になってしまったような気がします。
また、物語の重要な要素も、英語であればちゃんと台詞として伝えられたことも、日本語ではそれが変に端折られたりとかしていたので、これを鑑賞した子供たちに、ちゃんと伝えられていたのかなぁ、と思った次第です。

これは、英語の作品を日本語化する際の課題の一つでもありますね。



アナと雪の女王 | ディズニー映画

2014/05/07

[Travel Writing] 咲き乱れる藤のトンネル

去年、ガルーダ・インドネシア航空の機内誌で僕の写真が採用されて、発行された雑誌(PDF)を見ていた時のこと。雑誌の『Explorer』という特集で、この航空会社が就航している、主にアジアの写真が掲載されていまして、勿論僕の写真だけじゃありませんので、他のPhotographerさんの素晴らしい写真も掲載されていました。そのうちの一つが、福岡県北九州市の『河内藤園』です。
河内藤園は私設の庭園で、春の藤と秋の紅葉の時に入ることが出来ます。ご存知の通り、藤はゴールデンウィークあたりが見頃。この藤園、近くに鉄道も無くバスも通っておらず(昔は近くまでバス停があったらしいですが、採算が採れなかったのか廃止になったらしい)、来るには自家用車かタクシー、あとは観光ツアーを組んだバスくらいになります。

ゴールデンウィークあたりが見頃ですし、割と山へ分け入ったところへ車を走らせていくわけですから、実際の休みの時の混雑ぶりたるや、推して知るべしでしょう。まぁ立地が立地ですから、平地に比べて開花も満開もやや遅い方(天候に寄りますが…)。ですので、ゴールデンウィークが終わった平日に休みを取り、藤園に向かうことと致しました。

ちなみに当初は1人で行く予定でしたが、博多在住の友人(Google+のフォロワーの方)がご一緒していただくことに。またレンタカーまで手配していただいて、本当に感謝です。 m(_ _)m
余談ですが、当初僕は最寄までバスで行き、歩いて行くことを考えていました(最寄りのバス停からでも歩いて40分以上)。いい天気ですし、近くにダムと湖もありますから、散策しながら行こうかなぁ、と思っておりましたが、折角ご用意いただいたので同乗させていただくことに致しました。


割と朝早くに到着したつもりではあるものの、来てみてビックリ。結構人がいる!!
この日は平日ですから、そんなに人はいないものと思っていましたが… やはり同じことを考えている人がいるからでしょうか。そうそう甘くはないってことですね。 (´∀`;)
とは言え、藤のトンネルも歩くことすら出来ないくらいの混雑ぶりではないです。自分の思い思いのペースで散策するくらいの余裕はありますし、トンネルを抜けた上の藤棚は空いていて人もそれほど多くはなかったです。
とまぁ、平日の朝でこんな感じの混雑状況ですから、ゴールデンウィーク真っ最中の、良く晴れた日中の状況たるや、もはや想像つきません。。。 (´ー`)

ですが、やはりここの藤のトンネルは本当に美しい! 紫と白とを交互に植えているわけですから、色のコントラストが実によく映えます。確かに、ここはお勧めのスポットと言えます。
一回でもこんな美しい光景を見てしまったわけですから、もう一回見てみたいなぁ(実際は自分の納得のいく写真が撮れなかったからにすぎませんが。。。 (´∀`;))、と思った次第です。



藤園を見た後は、河内ダムを経て『北九州市立いのちのたび博物館』へ。
スペースワールドの隣にある、古代史を中心とした博物館で、北九州の古代生物や地理だけでなく、人類が誕生するより前の、恐竜等の古代生物が地球上を闊歩していた時のものまで展示されています。
この博物館内の展示物は撮影OK! まぁ調子に乗って三脚取り出したら、学芸員の方に注意されました… (´∀`;) スンマセン


特に、入ってすぐ、ぶち抜きのホールに多数の古代生物の骨格標本が並べられているのは迫力ありますねぇ。天上から吊るされた、主に海にかつて生息していた爬虫類の骨格標本等も見ることが出来ますし、古代生物好きにとっては垂涎の的のようなところではないか、と思います。

2014/05/06

[Travel Writing] 歴史ある町探訪 - 山口編

昨日の竹原の天気とは打って変わって、この日は終日晴れ。雨の心配をすることなく、街撮りPhotowalkを行うことが出来ました。

この日の目的地は、山口県萩市。江戸時代の長州藩の本拠。そして、幕末の動乱の最中を駆け巡り、近代日本の礎を築いた偉人達の多くが、ここから輩出されています。
山口県の県庁所在地は『山口市』。新山口駅に新幹線が停車することもありますし、また瀬戸内海沿いには工場も建設されています。いわば街の活気としては、瀬戸内海に面した南側に偏っているようです。対して萩のある日本海側は、『萩市』としての活気はまだ賑わっているように見えるものの、その界隈の町は、やはり寂しいものがあります。この日は、新山口駅近くのホテルに宿泊して、バスで萩へ移動。その途中は山道を通ります。萩の街撮りの後は、電車を使って下関→福岡・北九州へ。途中、いくつかの温泉街を通り抜けましたが、やはりどこか寂しさが過っていました。
日本海側は交通の便もそれほど良くはなく、瀬戸内海側との流通の差は増す一方。折角の素晴らしい土地もおおくあるのですし、うまい具合に、日本海側とのたくさんの流通を図っていきたいものです。



晴れていたから、ということもあるのでしょうけれど、東萩駅で自転車を借りて、海岸沿いを走り始めた瞬間から、萩の街並みにすっかり虜になりました。今まで様々なところの『街』を見たり撮ったり歩いたり、その街ならではの魅力を身体いっぱいに染み込ませますが、僕個人の中で、こんなにすぐに心と身体にスーッと入った街は初めてかもしれません。
しかもそれが史跡と言う側面ではなく、漁港や海岸線といった要素。日本海の青く湛える海の色が清々しいまでに綺麗で、そしてその海と、萩の自然、漁港、海に面した史跡が代わる代わる現れては、時折一体となるかのように景色を組み立て、表現していく… そしてその海の青を基調に、自然と人工の様々な色が折り重なり、形成されていく。決してカラフルではないのですが、同様に決して飽きない。もっと落ち着いた、色も単調ではないかと勝手に思っていたのですが、少し回っただけでも、「ここは素晴らしい!」と思いました。


海岸沿いを走りながら萩城址へ行く前に、吉田松陰と杉家の菩提寺である『泉福寺』へ。そこの住職さんに、松陰と、そして彼を支えた家族である杉家にまつわる逸話を窺いました。
杉家と言えば、2015年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』の主人公、杉文は松陰の妹。不勉強ながら、杉文という女性の存在は、この大河ドラマが発表された時に知りました。久坂玄瑞に嫁いだものの、禁門の変で玄瑞が自害。その後、元は自分の姉の夫であった楫取素彦に嫁ぎ、群馬県令となった夫を支え続けたと言われています。
この、楫取素彦との再婚の際、久坂玄瑞の想いを全て断ち切るために、名前(→楫取美和子にか改名)まで変えてしまうという、切実な覚悟が、当時の文にはあったのだそうです。世が世なら、大家族と、そして学友と共に笑いながら過ごせたものを、時は幕末の動乱。幕府も不安定ここ極まれり、追い打ちをかけるように諸外国からの圧力。否応なくそのような情勢に巻き込まれざるを得ない苦悩が伝わりました。




朝到着した時は、萩の街の魅力に取りつかれたように、ぐるぐる見て回りながら自転車を走らせていたのですが、本来頭の中にあった最初の目的地である萩城址、到着した時は、実は結構ぐったりだったりしていました。 (´∀`;)
麗らかな春も終り、初夏の薫りが少しずつ漂い始めた5月のゴールデンウィーク。日中の気温も上がり、ただでさえ暑いのに、雲もほとんどない快晴。朝でこそ爽やかな風が吹き抜けるものの、日中になるとやっぱり暑くなりますね… (´∀`;) なので、萩城址に到着した時は、ちょっと園内をゆっくり散策しよう… と考えても、身体をそういうふうに動かさないのがワタクシ。疲れるから寄せばいいのに、萩城背後の詰丸跡の山頂へ登りました。山はそれほどまで高くはないんですけれど、暑い中を走った後に山を登ったわけですから、少なからず足にきてしまったわけです。


そんなことがあったこと、また萩を去る時間も刻一刻と迫っていることから、本来であれば城下町をゆっくりと散策しようと思ったのですが、城下町の道程と、そして、萩であれば街中で見かける伝統工芸『萩焼』の作品を鑑賞して回りました。
恐らくですが、家屋を拝見出来るところもあるのでしょうけれど、萩の城下町の家は、今はごく普通の家に建て替わっているところが多いように見受けられます。その代り、道程の塀や瓦は、復元されているものも多いのでしょうけれど、当時の面影を少なからず感じましたね。



最初のモチベーションの高さを、こんな感じで街撮りPhotowalk終了に至るまでもたせたこともあり、次の目的へ行く電車の中ではグッタリ… (´∀`;)
そんな時、道端でこんな風に寝ているネコ様に癒されておりました。

2014/05/05

[Travel Writing] 歴史ある町探訪 - 広島編

広島空港に降り立った時の天気は、雨。
開始早々、あまりよろしくない天気ではありますが、今回の旅先のことを鑑みれば、まぁそれでもいいかなぁ、と思ったのは、今回の街撮りPhotowalkに選んだ場所が、『安芸の小京都』と呼ばれる、広島県竹原市の伝統的建造物群保存地区だからです。古き良き時代の家屋に囲まれた、狭い小路を撮り歩く時、雨で濡れそぼった道が、何ともいえぬノスタルジーな味わいを醸し出します。



今回の街撮りPhotowalkでは、ちょっと趣向を凝らしてモノクロに。白黒以外にも、セピアにしたりなど、『落ち着き』や『静か』というイメージと同時に、『寂しさ』や『侘しさ』というのも表現してみました。うまく表現できていればいいのですが… ^^;

2014年度後期のNHK連続テレビ小説『マッサン』の主人公・亀山政春のモデルとなった、竹鶴正孝の出身地が、竹原です。
竹鶴酒造は古くからの日本酒の蔵元であり、分家の出自とは言え、正孝も幼少の頃から日本酒の製造に興味を持っていたそうです。大阪の摂津酒造で働いていた折に、本場のスコッチウィスキーに出会い、その研究と製造法を学ぶためスコットランドに留学。そこで出会ったリタと、周囲の猛反対を押し切って結婚。大不況や戦争など、様々な艱難辛苦に見舞われながらも、粘り強い根気と至高の品質を目指したウィスキーを開発。その業と信念は、今にも引き継がれていると言えましょう。


僕が訪れた時は、ゴールデンウィークの只中であったにも関わらず、人はそれほど多くなく。雨、という天候だから、というのも影響しているのかもしれませんね。まぁそれが、ゆっくりと散策出来た一つの所以ではないかな、と思います。朝ドラの影響も、まだこの時期は少な目、という感じでした。
竹鶴酒造以外にも日本酒の製造・販売を行っている蔵元は、他にもいくつかあるようで、試飲も出来ます。『竹原』という街の名前の通り、『竹』にまつわる工芸品も数多くあり、それに加わって日本酒のほのかな香りがブレンドされ、まさに『味』と『香り』を楽しむ街、なのかもしれません。



そう言えば、街中を歩いていると、写真のようなピンク色のみょーな物体をよく目にしまして、何ぞ… と調べてみたら、アニメ『たまゆら』のキャラクターの『ももねこ様』なんですね。Wikipediaを見ると、色々なところに出没する猫、なのだそうですが…
うん、何か、こう、癒しになっているのかどうなのか、立ち位置的にビミョーな雰囲気だけは伝わりました。 (´・ω・`)


こういった伝統的建造物群保存地区は、割と一本道でその両脇に古き家屋が立ち並ぶ… といった構造が多いのですが、脇道への広がりもあり、またそこにも古い家屋が、そしてさらに脇道には… と、単純すぎない構造が、訪れる人の好奇心を掻き立てていると言えましょう。
目で見るだけでなく、鼻と口で味わう、それが竹原の魅力の一つだと思います。