2012/12/03

[Review] のぼうの城

天下統一を目論む豊臣秀吉による小田原攻めの一環として、その支城である忍城(埼玉県行田市)を攻め落とさんとする戦いを描いた物語。豊臣勢の総大将は、上地雄輔さんが演じる石田光成、対する忍城の城代は、野村萬斎さんが演じる成田長親。
石田軍約20000人。成田軍約500人。しかも、石田軍は圧倒的な武力・人材・資金を持っている。さらに総大将の石田三成は、生来からの生真面目な性格で、あまり油断するような様子は見られない。何としても自分の功績として討ち取ろうと、作戦を練る。そんな大軍に引けを取らない戦いをしたのだから、その城代はどんな人だろう… と思ったら、だ。

性根からののんびり屋。
政治の辣腕より農民とのおしゃべりと農作業。しかもその農作業ですら、あまりにもドンくさくて農民たちに煙たがれる。
けれど、その天真爛漫な性格は、どこか見る者聞く者に愛着を湧かせ、決して憎めない。領民のことをことを見ている、というより、単なるおしゃべり好き、世話焼き好き、というところでしょうか。それ故、領民は彼をほおっておけない。彼のあだ名は、でくのぼうから来て『のぼう様』。そんな戦い嫌い、日和見ののぼう様が、奮起して豊臣軍と戦うことに。いつもは飄々としていたのぼう様の奮起は、ほおっておけない領民を一揆団結させます。忍城内の武士としては約500人程度なのに、領民を含めると約2000人。それでも、互角に戦えるほどのものではない。彼の取った作戦とは…

原作では大男である成田長親。知人は、イメージとしてウド鈴木さんらしいのですが、僕個人としては、ウド鈴木ではこの作品の主役ははれないなぁ、と… 野村萬斎さんが演じるからこそ、成田長親が成り立ったと思っています。
何と言っても、成田長親の、いざという時の存在感の発揮と、存在感の無さの発揮。能の舞台の経験を幾度と踏んだ彼だからこそ出来る業かもしれません。城代としてその辣腕を振るっていくはずなのに、正木丹波守役を演じた佐藤浩市さん等にイニシアチブを取られている時の存在感の無さ。こういう緩急の効いた演技、好きですね~ ^^

戦いは、やはり水攻めで忍城を攻める石田軍の圧倒的な優勢。狭い忍城の中に、領民を避難させるも、兵糧攻めで苦労を強いられます。しかし、その水攻めを起こすための土手を造ったのは、領地の領民。成田長親としては、彼らの気持ちを掌握しています。一致団結させることで、土手を怖し、水攻めを終わらせます。
しかし、忍城を守り抜くも、主城である小田原城が先に攻め落とされ、豊臣軍の小田原攻めは終わりを告げます。他の支城はことごとく攻め落とされた中で、忍城だけが唯一残った。勝者であった豊臣軍でも、その功績を称えたそうです。そんなお城の物語が、今住んでいるところ近くにある。何だか、誇らしくも思います。 ^^



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