2012/12/17

[Review] 007 スカイフォール

007シリーズ23作目にして、ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じる3作目の作品。
まだまだどこかに不完全さを残すも、それが冷酷の中に人間の温かみを持つ『人間・ジェームズ・ボンド』がスクリーンに現れます。『カジノ・ロワイヤル』では、冷酷を装った熱血人間で、徐々に任務をこなすにつれて冷酷さを芯の深いところまで身に着けていくのですが…
ダニエル・クレイグが演じるならではのジェームズ・ボンド、というところでしょうか。

『007』シリーズと言えば、イギリス発のアクション映画の金字塔宜しく、世界中で愛される作品となっていますが、元々この作品は、20世紀半ばの冷戦時代から続く作品。映画化され、ショーン・コネリーが演じる時は、それこそ最新機器や車が勢ぞろい、といったところですが、今ではほとんどが見慣れたものになっています。
それは、映画の中でも『現実さながら』の様子として表現され、兵器開発班のQが言うように、「ミッションはパジャマ姿のままモニタの前で行うことが出来る」ように。それ故、危険な目に晒されるエージェントの存在が時代遅れと称され、MI6、及びそのボスであるMは、時代遅れの対象として白眼視される。

しかし、実際のところ、最後の最後は人間の身体と頭で勝負をせざるを得ない。Qがどんなに複雑で広範囲をカバーするシステムを構築したとしても、それを凌駕する天才的な頭脳を持つハッカーが現れれば、元も子もない。これが、のちにMI6を危機に陥れることになります。
しかも、今回対峙する敵は、世界を闇に陥れるような凶悪犯でも、人間社会を腐敗させるシンジケートでもなく、MI6を、ひいてはM個人に対する攻撃。かつてのMI6エージェントによる報復。計画に計画を練り、たとえ捕まっても、その逃げ口と周囲を混乱させるための準備は周到に用意する。やはり、テクノロジーは人間の手足の延長戦に過ぎず、人間の心と頭と身体が、問題を解決させるための武器なのだと改めて思わされます。
何せ、本作のクライマックスの舞台は、ジェームズ・ボンドの出身地であり、テクノロジーとは全くの無縁の『スカイフォール』。周囲に何があるのかを熟知し、それを行使しながらサバイバルさながらの戦いを繰り広げていかなければならないのですから。

本作を経て、ジェームズ・ボンドだけでなく、MI6も変わっていきます。これから成長していくのか、それとも廃退していくのか… 運命の流転は、まだまだ続きます。



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