2013/05/25

[Travel Writing] 苔生す森の中へ - 屋久島旅 前編

阿蘇山から熊本を経由して鹿児島へ。鹿児島市街地で一泊し、早朝の便で移動した先は、日本の世界自然遺産の一つ、屋久島。『日本の縮図』とも呼ばれる地で、その島だけで、奄美・沖縄のような亜熱帯から、北海道の亜寒帯までの気候が織りなされる。また、『洋上のアルプス』とも呼ばれ、1,500m級の山が複数あり、最も高い宮之浦岳は1,900m以上ある。
自然豊かな島でありながら、いくつかの港を備えており、本土からの船も日に数便出ている。場所によっては商店街が軒を連ね、生活にも困らない。夜10時まで開いているドラッグストアや、ファストフード店もあるくらいだ。こんなふうに、多くの人が住んでいる土地でありながらも、その島特有の自然と、その自然が作り出す美観が多く残されていることから、1993年に世界遺産に登録された。
勿論屋久島の美しさは、森林や山々だけではない。滔々と流れる水と、その水が流れ出る海。ウミガメをはじめとする海洋系生物の種も豊富で、その生態系も学術的に目を見張るものばかりだそうだ。予てから行きたいところの一つであっただけに、飛行機に搭乗する前から胸が高鳴っていた。

とは言うものの、ざっくりとここに行こう! という計画はあるものの、それをいつ、どのようにしていったらいいか、というのは全くと言っていいほど練っておらず… ^^;
まぁ、あまり固着しちゃうと面白さもそこそこなんだろうなぁ、と思いましたので。
友人曰く、種子島まで足を伸ばし、種子島宇宙センターまで行ったらどうか、というアドバイスをいただきましたが、種子島までの船の移動と、宇宙センターまでの移動、宇宙センター内の見学等を考えると、ゆうに丸1日時間を費やしてしまうので、今回は断念した。次の機会に行けたら、と思っている。




屋久島に到着して初日、まず最初に訪れたのが、白谷雲水峡。宮之浦川の支流で白谷川が作り出す渓谷と、それを取り囲むような鬱蒼とした森林に囲まれた場所を示す。
屋久島のぐるっと囲むような環状の道路は、自然遺産を抱く島にしてはバスの本数が思ったほど多いが、白谷雲水峡とをつなぐバスは本数が極端に減る。待っていても時間の浪費になるため、宮之浦港からの10km超を歩く、歩く、ひたすら歩く!
折しも、屋久島に到着したその日は、御誂え向きの快晴。歩くたびに汗が噴き出る。幸い、思ったほど湿気が無く爽やかな空気が風となって体をすり抜けるし、勾配も思ったほどきつくはなかったので、7kmくらいまではすいすい登れた。他にも、道すがら遠くに見える海の景色がとても美しかったので、写真を撮りながら歩き続けた。

8kmくらいになってから勾配もきつくなり、足取りも鈍くなる。あと2kmだし頑張るか~、と思ったら、通りすがりのワゴンの運転手さんが、「乗っていきなよ!」と言ってくれた。こんな汗だくの、敬遠の対象そのまんまの男を乗せてくれるだなんて…! 頑張るとは言ったものの、お言葉に甘えさせていただいた。こんなBlog見てるとは思わないけれど、有難うございます!
「行先同じだからいいんだよ!」と快諾して下さって初めて、その方が白谷雲水峡の小屋の管理人兼観光ガイドの方だと知ったのです。

しかし、着いたら着いたで安心しきってしまったのか、これから峡谷を散策して楽しむぞ! という時に、身体に疲れが溜まってしまったようで… orz
しかしここでぐったり休む、というわけにもいかないので、折角来たわけなんだし、歩幅はゆっくりでも、峡谷を散策してみた。
白谷雲水峡は、散歩コースとして整備されてまだ日が浅い。世界遺産に登録されたのと同じようなタイミングで散歩道として活用されたからか、周囲の自然を破壊せず、且つ峡谷沿いの歩きやすいところを歩道として活用しているようにも見受けられる。勾配もほとんどなく、山登りと言うよりはトレッキングに近い。子供でもすいすい進むことが出来る。
散歩道として整備された区画はとても広いものの、入り口から入って出てくるまで、長くても大体5時間ほど。日帰りコースとしても人気を博し、さらにガイドが穴場の場所を紹介しながら歩くため、7~8時間もの時間を使ってゆっくり散策するコースもあるらしい。峡谷の自然を知り尽くすには十分な時間と言えよう。

また、白谷雲水峡は、映画『もののけ姫』の舞台の一つであるとも言われている。森の奥まったところ、徐々に陽の差し込みが弱くなり、一層鬱蒼とした雰囲気に包まれる場所。そこには、人間を、もしくは人工物を寄せ付けないような神秘的な雰囲気が醸し出されているようだ。
そう言えば、ここまで乗せてくれたガイドのおじさんにも、こんなことを言われた。「白谷雲水峡は、晴れの日と雨の日の両方に行った方がいい」と。僕が行ったのは晴れの日。木漏れ日が差し込み、爽やかで、そして柔らかな雰囲気が森一杯に広がる。雨の日には行くことは無かったが、雨が降ると霧が立ち込め、変わって幽玄な空間が広がり、むしろ自然の不気味さがクローズアップされる。何より湿気を多く含むため、雨の日の方がビッシリ生える苔が映えるのだそうだ。同じ場所なのに、天候次第でこうも印象が変わるとは、自然の様々な貌が窺い知れたようだ。



白谷雲水峡を下り、短い時間ではあるが街中を散策。宮之浦港付近が、屋久島では最も栄えている街のようだ。フェリーや高速船が停泊し、船での本土(九州)との玄関口にあたるからだろう。
明日は、いよいよ縄文杉へ登る。縄文杉への登山行程と交通機関の時刻表、そして食料や水を調達して、早々に眠ることにした。



白谷雲水峡 (Shiratani Unsuikyo Gorge)
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