2014/01/02

[Review] 永遠の0

戦争とは、本当に残酷なものである。
基本的に、世論とは違う論調というものを認めない。それらはことごとく『異端』として排除される。どんなに情報と状況を収集し、冷静に自分の中で分析した結果だとしても。恐らくどの世界でも、戦争が勃発している時代に生きる多くの人は、まるで狂信者の群れのようになっているに違いない。勿論、政治やマスコミがそのように先導している、ということもあるけれど。

戦争が終わった後も、『海軍一の臆病者』と語り継がれる、主人公の実の祖父・宮部久蔵。しかし、ごくわずかな証言では、その評価はまるで正反対。そんな祖父を調べることは乗り気ではなかった主人公も、証言を集め、調べていくうちに、何故祖父が『臆病者』と呼ばれるような行動を取ったか、そしてそれを背景とする当時の情勢や戦争の残酷さを知ることとなる。
こうした、戦争を『是』とする世論の中で、ひたすら現実を直視し、自国の利益と未来に沿った行動を取ろうとする人物像として、『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』が記憶に新しい。フィクションとは言え、宮部久蔵も、いわゆる『リアリスト』として常に現状と未来を見据え、それに向けて行動し、またそうしろと部下たちにも教え付けていた。
しかし、如何に個人の考えが現実に沿っていようとも、いわゆる『世間一般の声』の前には無力に等しい。それ故、それが曲解として今日に至っている。

そのような少数の声が、それが『是』であろうと『非』であろうと、『多数』を前にすると如何に無力かというのは、今の時代にもつながるものがある。主人公も、自分たちの友人に、自分の祖父の足跡について、事実を語ろうとしても一向に通じない。
『嘘』や『曲解』も、それが多数派となれば『真実』にとってかわられてしまう。だが、宮部久蔵はそうだと知っていても、全てに拒否されようとも、自分の『是』を貫こうとした。その身を挺してまで。


時として『世論』は、その大きなうねりそのものが『間違い』に突き進むこともある。たった独りでも、それを是正していかなければいけない時もある。全てが自分を拒否しようとも。それだけの気骨を持つ人間が、政治家をはじめ、現代にどれだけいるのだろう。この作品を鑑賞して、改めて問い始められたと思う。そしてそれは、自分自身にもつながることだと考えている。

戦争に生きた祖父の形跡を辿ることによって見えてきた、祖父の本当の気持ち。そして、それを受け取った孫が見出した道筋。この作品は、そのきっかけが『祖父の戦争の形跡を調べる』ことであったが、きっと、自分自身の『是』を見出す、もしくは見出したきっかけは必ずあると思う。その大切さを感じられた作品であると思う。



映画『永遠の0』

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