2013/12/20

[Review] ゼロ・グラビティ

まるで観客にも無重力空間を体験させるかのような作品です。
観客に、まるでそのインシデントもしくはアクシデントの場に居合わせるかのような撮影手法として、『クローバー/HAKAISHA』が挙げられます。謎の生命体によって無差別に都市が破壊されるのを余儀なくされ、逃げ惑う人が手に持つハンディカム・ビデオで、それを通して観客はその臨場感を感じます。表現方法はそれとは全く違うものの、宇宙空間の、ひいてはそこで発生する様々な出来事を、主人公の視点で感じさせ、その場に居合わせる『臨場感』を提供する、というスタイルには全く変わりはなく、さらにその表現方法に『3D』ならではの技法が加えられたため、

しゅ、終始気持ち悪かった…… (´д`)

宇宙飛行士の訓練の一つに、『無重力になった状態、もしくは無重力に近い状態』に身を晒した時の自律訓練がありますが、大抵その訓練を受けた者は、酔って気持ち悪くなるとか。同じく、民間で無重力を体験できるツアーでも、開始してものの数分で気持ち悪くなってリタイアする人もいるとか。そんな感覚を、映画館で手軽に! ……というわけにはいかず。

というわけで、この作品を鑑賞する前の飲食はくれぐれもご注意ください。


もう一つ、この作品の観どころというと、無重力状態で出くわしたアクシデントが、如何に絶望感に打ちひしがれ、且つ、それから脱するために、地上にいる時以上に自分の脳をフル回転させる必要があるか、ということ。
何といっても、支えが無い。重力が無いから、どこに重心があるか、どこを自分の重心に合わせたらいいか分からない。加えて、前後左右上下も分からない。重心の無い世界で、何らかの力が加えられれば、支えが無い限りそこから自力で止まることなど出来ない。これほど、『人間』の無力感を感じることなどないでしょう。地球上の大自然ですら『人間』はその力に翻弄されているというのに。
そしてそれは、観客にも心に深く絶望感を植え付ける。だから、作品が観終わった後、ちゃんと灯りを見ることが出来て、自分の足がちゃんと地面(床)についていることに、心から安堵する。自分の『重心』と『自律』出来ることの素晴らしさを、再確認することが出来るのです。

まぁ、実際に宇宙でこの作品のような事故が起きてしまったら、現実には、作品のようなこと(いわゆる地球に帰還できるためのお膳立て)は万に一つもないように思います。如何に、あらゆるアクシデントに合っても対応できるよう訓練を積んでいるとはいえ、実際にはそれ以上の、予測し得ないアクシデントだってあり得るわけです。
最終的には、自分の脳と、そして身体をフルに活用して、どう最善を尽くすか、それに尽きるのでしょうね。あのように自分の重心すら分からない状況で、『最善を尽くす』など、とてもじゃないが重くのしかかるでしょう。重力がない状況であるのもかかわらず。 ^^;



映画『ゼロ・グラビティ』オフィシャルサイト

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