古代ローマ帝国の浴場技師が、現代日本にタイムスリップし、そこで受けたカルチャーショックをコミカルに描いたギャグ漫画『テルマエ・ロマエ』の映画化。
漫画でもそうであるように、この作品の主人公であるルシウスは、一切のギャグ的アクションを演じていません。が、料理漫画やアニメにおける、料理対決時のジャッジが、料理を食べて過剰とも言えるアクションをするのと同じように、ルシウスも現代日本の風呂やそれに関する技術を目の当たりにし、深く感銘を受けます。さらにそのリアクションが、あまりにも過剰すぎるとそれはそれで白けるのですが、生真面目な性格ならではのルシウスの反応、そして通常私たちが何気なしに触れている、日常のありふれたものであるにも関わらず、感激と歓喜に震える姿が、何とも言えぬ笑いを引き出してくれます。
古代ローマ人に比べれば、現代日本人(というよりモンゴロイド)は顔のほりが浅いので、『平たい顔族』と呼んでしまうのはまぁいいとして。そうであるならば、主人公を始め古代ローマ帝国の登場人物たちは、ほりの深いヨーロッパ人を採用するのが一番いい。のですが、これは日本映画ですし、古代ローマ人の登場人物も結構多いもの。全て揃えるのは難しい。というわけで、日本人なのに日本人離れした顔の造形を持つ阿部寛さん、に白羽が立ったのですな。
他にも、アントニヌスに宍戸開さん、ケイオニウスに北村一輝さん、ハドリアヌス帝に市村正親さん、と… という、如何に古代ローマ人と遜色無い配役にするか、というより、『平たい顔族』との対比を如何に深く出すか、というところに注力を置いたような気もするのです。笹野高史さん、神戸浩さん… ってこれはさすがにコテコテすぎるでしょう! ザ・平たい顔族の代表格って感じですがな。いずれにしても、彼らの存在がいるからこそ、日本人が古代ローマ人を演じても、そんなに違和感無く感じられるのかもしれません。 ^^;
それにしても、
リアリティを出すために要所要所でラテン語による会話がなされて、本当に苦労なされたのではと。イタリア語やスペイン語への派生した元の言語であるとは言え、並大抵の努力ではなかったのかな、と勝手に思っています。
物語は、前半部分は原作に対してほぼ忠実に表現しています。一方で、後半部分からオリジナルの物語が展開していきますが、現代日本の浴場の技術を取り入れてしまったばかりに、徐々に歴史の道筋が変わってしまう、それが、いずれローマの未来をも変えてしまう危機に瀕してしまうために、ルシウスと、ヒロインである上戸彩さんが演じる山越真実が奮闘します。そんな中で、お互い、本当にやりたいこと、やりたい道を見つけ、選び、邁進していく、というもの…
まぁ、己の道を見つける王道の物語、という感じですな。そして、歴史を変える、危機を救う、というのは、如何にも仰々しい感じがしますし、何とも戦いを彷彿させるような展開ですが、それはこの作品。やはり解決には『風呂の造営』なのです。 ^^
この物語の主題の1つでもある、『自分の夢、本当にやりたいことを見つける』を主体として観るには物足りない本作。かと言って、原作のように、ルシウスが現代日本に行っては技術を垣間見、戻って古代ローマの浴場に反映させる、ということを繰り返すような物語ですと、どう帰結するのかが分からなくなります。ですので、『自分の夢、本当にやりたいこと』を物語の含みに入れて、起承転結を促す、という意味では、それこそコテコテではありますが、見やすい作品ではあるかな、と思いました。
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