第26・27代連合艦隊司令長官。太平洋戦争(大東亜戦争)の前半、特に真珠湾攻撃 (Attack on Pearl Harbor) と、ミッドウェー海戦 (Battle of Midway) の総指揮にあたった。
参考 : Wikipedia
真珠湾攻撃に端を発する太平洋戦争初期を描いた作品と言えば、『トラ・トラ・トラ!』が有名ですね。かなり昔、僕も鑑賞したことがありますが、もうめっきり忘れてしまいました。ですからこの作品も、太平洋戦争初期を描いた、僕が鑑賞する『初めての』作品として触れようと思います。
本作に登場する、連合艦隊司令長官である山本五十六は、徹底した現実主義者として描かれていたように思います。
アメリカやロシア、ヨーロッパの海外情勢を熟知しているのは勿論の事、彼らが日本に対して、どのような意識・感情を持ち合わせているのかも研究している。加えて、日清戦争や日露戦争といった戦局を、直接であれ間接であれ目の当たりにしている。まるで、明治からの太平洋戦争勃発に至るまでの、近代日本建国からの戦争の時代に生きているかのようです。
でも、だからこそ彼は徹底的な現実主義者として、その辣腕を振るっているのかもしれません。
圧倒的な物量の違いを誇る日本とアメリカ。大国アメリカとの戦いは、世相はかつての日露戦争を彷彿させます。どんな強大な敵が相手でも、日本は勝ち抜いてこれた、と。しかしながら日露戦争の時ですらも、その裏では、伊藤博文などの現実主義者はロシアの属国になるのではないかと戦々恐々となり、資金も資源も底を尽きかけ、融資で何とか辛勝を勝ち得たという状況でした。加えて前線では、陸軍も海軍も、知恵に知恵を絞って最善を尽くして勝利を掴んだ。
しかしそれも、のど元を過ぎれば熱さを忘れるがごとく、「ロシアに勝てたんだからアメリカにも勝てる!」という無知蒙昧振りを開けっぴろげに広げる世論。それを先導するマスコミ。
他にも、三国干渉を初めとするように、ヨーロッパの国々は、アジアの、それも極東の小さな島国が国際社会で台頭するなど、誰も考えたことが無く、よい顔をしなかった。日独伊三国同盟も、所詮は表面上の締結に過ぎず、いつ取って喰らおうとするか分からない状態。現に、ロシアとドイツとの間で不可侵条約が締結されても、あっさりとロシアがそれを破ったのだから。
そんな状況だからこそ、山本五十六は、世論が間違った方向に突っ走る最中でも、決して短期スパンでのみ有効な策には目もくれず、地に足を付けた現実的な方向に目を向けて、日本の行く末を見つめていた、そんな風に思います。
しかし、彼も一介の武将である以上、上層部の命令に逆らうことは出来ず、指揮を執る時は果敢に執る。それでも、彼の根幹となる考えは、「今の日本には、本当に勝ち目などない。先手必勝で相手の牙を削げるだけ削ぎ、一気に講和に持ち込む」、これが彼の考えでした。
しかし、これから戦う相手だけが彼の敵ではなく、彼の敵は、内部にも存在していました。これから仕掛けるべき戦争の何たるか、その目的・本質を見抜こうともせず、刹那的な考えて敵を叩こう、武勲を上げようという者たちばかり。それが結果として、真珠湾攻撃も成功とは言えず、ミッドウェー海戦も失敗に終わり、戦争の主導権は失われていくだけになってしまったのです。
こんなことを書いていると、何だか、今の日本の政治・政局を彷彿せずにはいられません。たとえ、中長期的には衰退の一途をたどるような政策を打ち出しても、短期的であっても効果が発揮されるのであれば、それは輝かしい『実績』となる。そのためのツケがどれだけ大きく、重く圧し掛かろうとお構いなく。後世、歴史を振り返れば、それは単に、自分だけが、もしくは自分の世代だけがいい思いをしただけの愚策にしか映らない、ということも知らずに。
本当に長期的・持続的に、国や、地域や、家族が幸せに暮らすことが出来るようにするには、そうではないだろう、と。もっと、その底に潜んでいる本質があるのだろう、と。誰もそれを見ていない。見ようとしていない。だって、皆今『しか』見ていないのだから。そしてそれは、僕自身に対しても、反省の便として、今もなお突き付けられています。
一見すると臆病者、慎重に慎重を重ねる者として見られかねない現実主義者。しかし、勢いが付き、それに伴って突き進んでいく時であるからこそ、見誤ってはいけない、と思うのです。日露戦争終結後の東郷平八郎の訓示にもある、『勝って兜の緒を締めよ』のように。
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