2013/05/24

[Travel Writing] 火の国に咲く花

阿蘇山の山肌がピンク色に染まる… 未だ活発な火山活動を起こしている阿蘇山、噴煙と有害な火山ガスに包まれ、それによって生物の活動は阻まれ、登山地として有名でありながらも、たびたび入山制限が敷かれている山が、年に1度の短い期間、ミヤマキリシマのピンク色によって染まるのだそうです。

今年の春は、3月上旬まで身に染みる寒さが続いたのに、3月半ばから急激に暖かくなり… 当初例年通りの桜の開花が、観測史上2番目に早い開花と、そして一気に散ってしまう結果となりましたね。それによって、花見イベントも軒並み前倒しになったとか。
その影響は桜に限らず他の植物にも影響しました。ミヤマキリシマは、春の終わりを告げ、そこから初夏に移るための5月末~6月頭にかけて咲くのが通常と言われています。が、春の暖かさの影響が思わぬとことに波及し、仙酔峡のミヤマキリシマは5月半ばがピーク。5月末には、ほとんどが見頃を過ぎておりました… orz


仙酔峡はその名の通り、仙人が酔いしれるほど美しい峡谷の風景を愛でることが出来ることから名づけられた場所。ミヤマキリシマが見ごろの頃は、殺風景な山肌もピンク色に染まり、眼下に見下ろす阿蘇の町並みがとても素晴らしいのです。
……のはずなのですが、まだ咲きそろっていない株がいくつか散見されたものの、概ね見頃は終了。早々に立ち去るはめになろうとは。 (´д`)

仙酔峡はダメでも、阿蘇山の山頂は見頃を迎えているということですので、踵を返して山頂を目指することにしました。
今回の阿蘇の旅も交通機関を利用したのですが、阿蘇駅から阿蘇山山頂へのバスが出ています。本数は1日5~6往復くらい。想像していたよりかは本数があったと思います。それに乗って山頂へ。



後で知ったことなのですが、ミヤマキリシマは火山活動により生態系が攪乱された山肌の優先種として生存できる花なのですね。逆に火山活動が終息し植物の遷移によって森林化が進むと生息できなくなる、とか。
活発な火山活動があるからこそ美しく咲き誇るミヤマキリシマ… 生物の生息を拒む火山地帯であるのに、まさかその恩恵を受けて育っていたことを知り、感銘を受けました。ここには、ギリギリのラインでの生と死の鎖が、輪が連なっている、そう感じざるを得ないところだったのです。いや、そんなところだからこそ、懸命に生きようと美しい花を咲かせるのでしょうね。だって、ミヤマキリシマも生きるためには、花粉を運んでもらわなければならない。そのためには虫を引き寄せる必要がある。この、噴煙と有毒ガスが蔓延する地に虫を。

生命の駆け引き。すぐ隣り合わせの死。生きるための渇望。たった一瞬なれど煌めく生命の輝きを、この地で実感した旅でした。


この日、火口付近では僅かな時間立ち入り制限が解除されたのですが、僕が到着した時には警告が鳴って敢え無く立ち入りできず……
ま、まぁ身の安全が大事ですから… とは申せ、ちょっと残念だったなー、と思った次第です。 ( ̄q ̄)



仙酔峡 (Sensuikyo Gorge) 草千里ヶ浜 (Kusa-senri)
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